
《The Person of Making an Art》 《アートをつくる人》 Ink and Print on Papyrus 2022

《The Letter from Terumi ,Physical Contact, Towards Peace》 Painting (Installation) Gallery OUT of Place Tokyo ,2020

Terumi GOTO 《Social Relationships》 Acrylic on Paper and Frame 2022

《The Person of Making an Art》 《アートをつくる人》 Ink and Print on Papyrus 2022
NEWS
▶︎2024年度・藤沢翔陵高校[表現ー美術]担当
▶《アーティストの子育て》に参加しています(藤沢市アートスペース)
アーティストの子育て調査・インタビュー記録
▶後藤てるみ個展《知的生命体》(ギャラリー月極)2022.9.18
▶2022.4.16・17・23・30 コッテパンダン展に参加します 映像作品《Art is.》を浴室にて展示します
▶2022.3.8〜3.27特別企画《オペラーカス創造ラボvol.1》(大崎清夏/後藤てるみ/cobird/TEPPEI YAMADA/中村厚子とアイウエオ歌劇団 , 藤沢市アートスペース)にて《58のマニフェスト》を発表します 絵画,テキスト,ドローイング,彫刻,音声,パフォーマンス等 ●《オペラーカス》アーティスト・トーク(動画)
▶@藤沢市アートスペース《心開放運動〜Free!Painting〜》参加型パフォーマンス,2021.10.31
▶【kotte:特別授業】2021年1月10日(日) 延期※coming soon![登壇者]やんツー, 花房太一, 布施琳太郎, 武内竜一, 有賀慎吾, 後藤てるみ [内容]やんツー▷メディア・アート史(ラウシェンバーグ以降) 布施琳太郎▷SNSとアート 花房太一▷哲学とアート 有賀慎吾・武内竜一・後藤てるみ▷現代美術会議
▶プロジェクトチームSUPER-NORMAL(檜皮一彦,斉藤有吾,岩崎が,後藤てるみ,カリーナ・レナード,あらすけ,有賀慎吾,飯島モトハル,百海芽吹,内田壮哉)としてArts Chiyoda 3331・GALLERY OUT of PLACE TOKIOにて「SUPER-NORMAL?」展に参加しています インスタレーション《物理的な接触―平和に向けて》を発表しています 絵画,テキストペインティング,テキスト,彫刻,音声映像,ドローイング,行為等 http://www.outofplace.jp/tokio/
▶αM Galleryの国立奥多摩美術館展示に参加しています 会期:2020年2月1日(土)~3月14日(土)
犬の讃歌 1 あるところに汚い犬が居た。 この犬は日頃から口のまわりをベロベロベロベロ舐め回すので、周囲に悪臭を放っていた。 むせ返るような臭いが立ち込め、口の周りは汚れなんだか模様なんだか分からない、赤いシミが点々と付いていた。 この犬は犬用ジャーキーを食べるのが趣味で、主人からジャーキーをもらうと、それはもう、すごい勢いで食べた。 床に落ちたジャーキーの破片を拾うと、涎でねっちゃりだった。 主人はまたがっかりした。 「こんな犬、もう飼わなければ良かった」 2 この犬にはもう一つの趣味がある。 それは泳ぐことだった。 家の前にあるプールで水浴びをすると、臭いはいくらかマシになったが、その代わりにプールは、いつも薄汚れたベージュ色になっていた。 プカプカとジャーキーの破片を網ですくいながら、主人はまた救いようの無いことを考えた。 (この犬をいっそのこと捨ててしまおう)と。 主人はDojo Cutsの《Rome》を有線で100回連続で聴くと、さすがに飽きてきて他の曲に変えた。 犬はあいも変わらず涎を下に向け、息を荒げてジャーキーをおねだりしていた。 3 「ぴしん!」 と主人は犬を打った。 「キャン!」 と犬は激しくのたうち回り、命乞いをした。 主人はそんなに激しく犬を打っていなかったし、犬だってそんなに激しく打たれてはいない。 しかし主人は心を病んだ。 犬はそんなこと分かっていた。わたしが主人から嫌われていること。 それにわたしもわたしが居なくなれば良いと思っていた。 山に捨てられた犬は、必死で坂道を駆けていった。 主人は家に戻ると、まず掃除から始めた。 プールの水を全て抜き、一から掃除をした。 4 排水溝にジャーキーの破片が詰まっていて、ヘドロとなった底の方で、悪臭が鼻に付いた。 「うっ……」 いつもの臭いとは違い、半分くらいはアンモニア臭がした。 排水溝に水を流さなければ気が付かなかったが、犬は2つ目の趣味の最中、失禁をしていた。 突然に涙が襲ってきた。 悲しさだった。 犬は坂道を半分くらい駆け下りてきたところで、口をぱくぱくしはじめた。 マスクをはめて、今度は部屋の掃除に取り掛かった。 しばらく犬生活が続いて、居なくなったときに初めて気がつくことがあった。 5 そのころ街の住人にはこんな噂が立っていた。 “歌を歌う犬が居る” 主人はカーペットをすべて剥がし、犬の毛がたくさん付いた敷物をハサミでちょきちょき切りながらゴミ袋に捨てた。 床を掃いて雑巾で水拭きしながら、剥がれた犬の爪や、体液のこびり付いた跡もきれいにしながら、ちょうどいつもの夕方の二回目のご飯の時間に差し掛かった。 主人は顔を上げた。 犬はこんな歌を歌っていた。 6 “ ああ なんて いい 天気なんだ ” “ こんな いい 天気の 日には ” “ 主人とドッグランに行って たくさん おやつをもらって ” “ それはもう いつも もらえない おやつをもらって ” “ たくさん 食べるのさ あの子よりかは 多い よ ” “ ぼくは 主人のもとに生まれて はじめから ここの住人さ ” “ 主人は ぼくを ぶつけど ぼくは主人を噛まないよ ” “ だって 痛いから ” “ 痛いから ” “ 痛いから ” “ 痛いから ” “ 痛い から ” 7 主人はホームセンターに居た。もどってくるかはわからないけど、 ピンク色の絨毯を用意して、たくさんごはんを盛って、それを犬が食べ終わったら、いつものジャーキーをあげて、そのあとたくさんたくさんいい子、いい子、をして、夜のプールで泳がせてあげるんだ。 帰ってくるかはわからないけど……。 主人は泣いた。ぼくは感情に身を任せてなんてひどいことをしてしまったんだろう、と。 あの犬には特別な才能があった。 それはぼくの気持ちがわかることさ。 こうやって泣いていると、いつもそばに来てくれた。 こうやって泣いていると。 シャララン。 庭の門に、一匹の犬が立っていた。 確かにぼくの犬だった。 8 犬は、とっても平気な顔をして、ぼくのことを真っ直ぐに見てる。 ぼくはちっとも平気じゃない。 ぼくはちっとも平気じゃない。 びちょびちょになったほっぺたを、犬は朝まで舐め回した。 “ かわいいな かわいいな ” “ 主人はとっても かわいいな ” “ 主人は変わらず ぼくのもの ぼくのもの ” “ ぼくのもの ” “ ぼくのもの ”