1-1 絵画材料研究 4枠=2単位
【支持体】キャンバス張り,任意形パネル+キャンバス木枠作成「F40号画布より3点の支持体を作成すること.また,3号程度のパネルを1点作成すること.」レクチャー1枠/作成2枠
課題意図
まず油絵を始めようとする時、画材屋へ行き、手頃なサイズのキャンバスを物色することになるだろう。しかし、それは「既製品」である。しかもF規格、P規格、M規格、S規格といった風に「規格サイズの商品」しか売られていない。ここで画家は他の作家との差異を見出すために日夜たゆまぬ努力をするわけだが、どうにも規格モノのキャンバス(特に張りキャンバス)だとなかなか差異というものは難しく、多くの人の目を騙すことは出来ようが、目の肥えた人間を騙すことは出来ない。それはキャンバスの「側面」を見れば一目瞭然だからだ。商品として美しく整った状態でタックス(キャンバス用の釘)が等間隔に打たれているので、すぐに「これは“張りキャン”(予め木枠に貼ってあるキャンバスの商品のこと)だな」と解るし、それを印象づけることになる。縦横の比率にしても、そもそも規格モノの矩形に対し作家の意図する絵画への「イメージ」が、その矩形に対し果たして「合っている」のだろうか?ぴったりフィットしていることの方が難しい。このことから、創り手は自らその己の絵画へのイメージに機敏に対応し、適材適所、支持体(絵具の相手、つまりキャンバスや紙のこと)に対して、シビアにサイズと比率、並びに「材質」までも本来的に決定を下すべきなのだ。後に己の作家性への模索をしていくなかで、この方法を取らずとも「この方法論を知っている(経験をした)か」が大きな問題なのである。
参考作家
Frank Stella (フランク・ステラ,1936-,アメリカ)
【絵具の性質/種類】「基礎:油絵具の名称と色の性質(透明/不透明/半透明/隠蔽力/ブルーの性質/ホワイト・ブラックの配合による変化等)の把握・根拠を掴むこと. 応用:基礎を活かしながら抽象絵画を制作せよ.」1枠
課題意図
絵具をつかって絵を描こうとする時、パレットと水入れ(ここでは油絵具なので溶き油を入れる絵皿)を用意し、12色セットの絵具を用意して、それをパレットに順ぐりに並べて描き始めるだろう。ここでひとつ疑問だが、同じ青でも、2色あるがそれぞれはどう「違う」のだろうか?また、紫をつくるとき、どちらかの青と「赤」をつかってつくるだろうが、果たして青と赤で単純に紫になるのだろうか?「色がくすむ」経験をすることになるのだろうが、ここでひとつ紫の答えとしては、正確には青と赤では紫は作れないことが言える。つまり12色セットのラインナップでは絶対に不可能な事象が多々あり、しかもその不可能性は創り手にとっては非常にシビアであり、なかなか美しい色彩でイメージを画面に映し出すことが出来ない。ひとつ予定が狂えば、歯車のように狂っていく。またひとつ調和しない色に合わせて色を作ってしまい歯車が狂い、そのまた正直全く調和していない2つの色に合わせて新しい色を作っても更に調和しない連続が起こると、もうパレットは予見した通り荒れ狂い、[色彩の調和=配色]を全く無視した状態で「ただ描く」だけか、濁った色彩のままフィニッシュすることとなる。したがって制作は困難を極めるのである。創り手のイメージは、否応にも脳内であるひとつの色を我儘に「オーダー」している。したがって脳内で思い描いた色と、現実に作り出された色とが往々にして、どうにも不一致を醸し出してしまうことが多い。図らずとも、こういったケースが制作の最中に頻繁に起こってしまったら、もう絵を描くのを止めてしまいたくなるだろう。だからイメージに合った色が偶発的に作られたら、気持ちの良いことこの上ない。忘れてはならないのは、すべてのひとが脳内では「調和した色彩」をイメージしているはずということだ。紫をつくるには、「コバルトバイオレット」を購入すれば良い。色数の多さは成功に比例するので、画材屋へ行けば数え切れないほどの色数の絵具売り場と出会うことができるように単純に多様な色の絵具を使っていく無条件な楽しさがそこにはある。淡い紫を想像するなら、「マゼンタ」を新しく購入し、「ウルトラマリン」と混色すれば解決する。ほとんどの場合、物理的に不可能な色づくりにいくら精を出しても解決するどころかやればやるほど遠のく。混色とは1+1=2のようで、必ず計算式がある。闇雲にやっているうちに奇跡的に未知が開けることは決して無い。12色セットにまずは幾分かプラスすることろから始める。しかし最後に、絵具をただ買って増やせば良いわけではなく、それだけだと「原色中心」の稚拙な試みで終わってしまうことが課題として残る。自由自在に色彩を扱うということは、実は「ある程度の色数(20色程度)」+「白と黒の調合」で決まる。このことを実践するのが今回の[絵具の性質と種類]という授業である。
絵画とは何か
Painting Logic +30 skills
課外講習会❶
絵画とは何か。今日のアートにおいて、技法とはどのような役割や一面を担っているだろうか。20世紀以降、美術への観念や思想の枝分かれと共に絵画技法は爆発的に増えた。絵画制作のビギナーにおいては美術館などで作品と対峙した時「一体どうやって描いたのだろうか」と疑問が湧いたことがあるだろう。到底自分に為せる技ではなかろうと絵画を神格化し敷居の高いものにしてしまったかもしれないが、今回の絵画スキルを学ぶ者にとっては、それらを新たに自分のものにしてしまおうという目的と挑戦がある。これは例え批評家であっても、彼らは見る専門であって実際に手を絵の具で汚し長年の手の感覚で微妙な絵画のテクスチャーを操作できるということはない。本学習は絵画(平面作品)においての暗黙的で権威性の起因であった「ネタばらし」である。又、構図・色彩、地と図、余白、各技法と技法を結ぶプロセスによる意味や目的は作品を理解する上で最も重要であり、それが「絵画とは何か」への経験的かつ本質的な答えである。(テキストより)
修得できるもの
▶︎1. 絵画30技法+おまけの5技法 2. 絵画における現代アートについて 3. 抽象絵画・具象絵画の違い 4. 油絵具・道具の使い方基礎 5. 画材の選び方 6. 色彩基礎 7. 構図基礎 8. 短縮版美術史 9. 作家〔巨匠基礎〕 10. 著作物基礎
制作するもの
▶︎抽象絵画×0~6号キャンバス4枚(サイズ選択式)...4作品制作
やりかた
▶︎書き込み式テキストにて。
技法のための油絵溶剤等調合比、レシピ、注意点を1技法終了後に記入
「Painting Skills 30 / 油絵30技法 テクニックハンドブック」
貸し出し
▶︎油絵具、道具一式
... 筆記用具、汚れても良い服装または作業着の持参
©︎Tomoko KUGA
【課外講習会❷】
写実基礎・洞察力・視点
デッサン力
強化レッスン
目的とねらい
ここでは、あくまでもデッサンを客観的かつプロフェッショナルな訓練として捉えます。デッサンとはドローイング/習作の描画材(鉛筆,木炭,インク等)においての写実的方法であり、描くこと自体に作品性、メッセージ性は伴わず、あくまでも「写実性の練習」に過ぎません。技術大国日本では美術の基礎といえば疑いなく「デッサン」と捉えがちですが、美術の基礎がデッサンなのではなく「写実的(上手な)絵画の基礎」がデッサンと言えるでしょう。したがってデッサン力(鉛筆での写実力)を駆使して「何(作者のコンセプト,ねらい)を表現するか」が鍵となってきます。kotteでは美術史における技術価値自体を逆説的に捉え、今日の美術においての多様な入り口の一つと考え、絵画においての写実性を自らコントロールできる力を養います。
▶︎デッサン基礎 【質感,空間,状況】
書き込み式デッサン力強化シート(A4)
●鉛筆の使い方 ●筆圧 ●コントラスト ●明度
デッサンは実は簡単で、やり方が分かれば誰でも簡単に描くことができます。又「観察力」を養うことにより見えている事柄への先入観が無くなります。素直に・フラットに物を捉えることができ、思ってもみない意外な発見となるはずです。「デッサン力=正しいものの見方」を学んでみると、表現全般において取捨選択ができ説得力が増します。透明なもの/不透明なもの・白いもの/黒いもの の描き方はモチーフに対して背景が相対的であるということが理解でき、筆圧や明度、コントラストをコントロールして素材の描き分けやプロポーションが取れるようになってくると、表したい事柄にどの描画材が合うか、どういった描き方が適切かが選択できるようになってきます。それら全ては、これまで美術や絵画を難解にしていたものだと気がつき、より一層アートを身近に親密な距離感を取るきっかけとなるでしょう。